「退去時に、自分がつけた覚えのない傷の修繕費を請求された」という相談は、賃貸のトラブルの中でも特に多いものです。こうしたトラブルを防ぐ最も確実な方法が、入居前に部屋の状態を写真とチェック表で記録し、管理会社と共有しておく「内装検査」です。この記事では、内装検査で確認すべき箇所、記録の残し方、共有の仕方を、名古屋で部屋探しをしている方向けに解説します。
内装検査とは何か
- 内装検査は「入居前の部屋の状態」を写真とチェック表で記録する作業
- 記録は管理会社と共有し、双方で確認した形にしておくことが重要
- 退去時の原状回復費用は「入居時の状態」と比較して決まるため、記録の有無で結果が変わる
内装検査とは、入居前(鍵の受け取り後、荷物を運び込む前)に、壁・床・天井・建具・設備の傷や汚れ、動作状況を一つずつ確認し、写真とチェック表に残しておく作業のことです。
退去時の原状回復は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に沿って、経年劣化や通常の使用による損耗は貸主負担、入居者の故意・過失による損傷は借主負担、という考え方で判断されます。ただし、「その傷が入居前からあったのか、入居中についたのか」を証明できなければ、判断は曖昧になります。入居時の記録は、この証明のための最も有効な材料です。
多くの管理会社は「入居時チェックシート」や「室内状況確認書」といった書類を用意し、入居後一定期間内(目安として1〜2週間)に提出するよう求めています。この書類の提出が内装検査にあたりますが、書類がない場合や、記入欄が簡素な場合は、自分で写真とメモを補っておく必要があります。
内装検査で確認する箇所
内装検査は、部屋を「壁・床・天井」「建具」「設備」「水回り」の4つに分けて順番に見ていくと漏れが減ります。
| 場所 | 確認する内容 |
|---|---|
| 壁・天井 | クロスの剥がれ・傷・汚れ・画鋲やネジの穴・シミ・カビ |
| 床 | フローリングの傷・へこみ・変色、クッションフロアの破れ、畳の焼け |
| 建具 | ドア・ふすま・クローゼット扉の傷、開閉時の引っかかり、蝶番のゆるみ |
| 窓・サッシ | ガラスのひび、網戸の破れ、サッシのゆがみ、鍵(クレセント)の動作 |
| キッチン | シンクの傷・さび、コンロやIHの動作、換気扇の音と汚れ、収納内部 |
| 浴室・洗面 | 浴槽やパネルの傷、鏡のうろこ汚れ、排水の速さ、換気扇、給湯の動作 |
| トイレ | 便座のひび・固定、ウォシュレットの動作、給水・排水、床の変色 |
| 設備 | エアコン(冷暖房・リモコン)、給湯器、インターホン、照明、コンセントの通電 |
| 玄関 | ドアの傷、鍵の本数と動作、ドアスコープ、下駄箱の内部 |
| ベランダ | 手すりのさび、床の汚れ、排水口の詰まり、物干し金具 |
「傷があった」だけでなく「傷がなかった」ことも記録しておくのがポイントです。傷のない壁も全景を撮っておけば、退去時に「入居時からきれいだった」ことの証明になります。
写真の撮り方と記録のコツ
写真は「どこの傷か」「どの程度の傷か」の両方が分かるように撮ります。
- 各部屋の全景を4隅から撮る(部屋全体の状態の証明)
- 傷や汚れは、位置が分かる引きの写真と、状態が分かる寄りの写真をセットで撮る
- 寄りの写真は、傷の横にメジャーや硬貨を置くとサイズが伝わる
- 設備の型番ラベル・製造年ラベルは、あとで耐用年数を確認するために撮っておく
- 蛇口・給湯器・エアコンは動作中の様子を短い動画で残すと確実
撮影後は、写真の撮影日時情報(Exif)が残る形で保存してください。スマホの写真をそのままクラウドに保存すれば、通常は日時情報が残ります。SNSやメッセージアプリで送ると日時情報が消える場合があるため、管理会社への共有はメール添付やファイル共有サービスを使うのがおすすめです。
チェック表には、次の項目を記入しておきます。
- 場所(例: 洋室 北側の壁 窓の左下)
- 状態(例: 幅約3cmのクロスの擦れ)
- 写真の番号または ファイル名
- 確認日
- 管理会社への報告日と、報告に対する返答の有無
記録を管理会社と共有する
内装検査で最も重要なのは、記録を管理会社に送り、「受け取った」という返答を残しておくことです。自分の手元にあるだけの写真は、退去時に「いつ撮ったものか分からない」と扱われる可能性があります。
共有の手順は次の通りです。
- 管理会社指定のチェックシートがある場合は、期限内に記入して提出する
- シートに書ききれない傷は、写真とチェック表を添えてメールで送る
- メールには「入居前からあった傷として記録をお願いします」と明記する
- 返信があれば保存し、返信がなければ電話で受領を確認してメモを残す
- 提出したシートやメールのコピーは、退去まで保管しておく
まるすま賃貸では、入居前に担当者が立ち会い、壁・床・建具の傷や汚れ、設備の動作を写真とチェック表で記録し、管理会社と共有する内装検査を行っています。入居者ご自身での記録に加えて第三者の記録が残ることで、退去時の話し合いがしやすくなります。
内装検査で見つかった傷はどう扱われるか
内装検査で傷や不具合が見つかった場合、扱いは物件・管理会社によって異なりますが、大きく次の3つに分かれます。
| 扱い | 内容 |
|---|---|
| 入居前に補修 | 契約時の約束(クリーニング・補修済みで引き渡し)に反する場合は、入居前に直してもらえることがある |
| 現状のまま・負担対象外 | 補修はしないが、退去時に借主の負担対象から外す旨を記録に残す |
| 設備の不具合は修理 | 給湯器やエアコンなど、生活に必要な設備の故障は貸主負担で修理されるのが一般的 |
いずれの場合も、「どう扱うか」を管理会社とやり取りした記録(メールなど)を残しておくことが大切です。口頭での約束は、担当者が変わると引き継がれないことがあります。
内装検査を怠った場合に起こりやすいトラブル
入居時の記録がないと、退去時に次のようなトラブルが起こりやすくなります。
- 前の入居者がつけた床の傷を「あなたがつけた」として修繕費を請求される
- 入居時から不調だった設備の修理費を、退去時に借主負担とされる
- クロスの張り替え範囲や面積の根拠を確認できず、請求額に反論できない
- 敷金からの差し引き額に納得できないまま、返金が遅れる
原状回復のルール(ガイドラインの考え方、経年劣化と借主負担の線引き、設備の耐用年数による按分など)は、「賃貸の退去費用と原状回復のルール」の記事で詳しく解説しています。内装検査とセットで知っておくと、退去時に落ち着いて話し合いができます。
入居後に気づいた傷の対応
荷物を運び込んでから傷に気づくこともあります。その場合も、次の対応を取れば記録として有効です。
- 気づいた時点ですぐに写真を撮り、日時と場所をメモする
- 管理会社の報告期限内なら、追加分として速やかに送る
- 期限を過ぎていても、「入居直後に気づいたが報告が遅れた」旨を添えて報告しておく
期限を過ぎた報告は入居前の傷と認めてもらえない場合がありますが、記録を残しておくこと自体に損はありません。
まとめ
入居前の内装検査は、退去時の原状回復トラブルを防ぐための最も確実な手段です。壁・床・建具・設備を一つずつ確認し、傷の有無を写真とチェック表で記録して、管理会社に共有し受領の返答を残しておきましょう。管理会社指定のチェックシートがある場合は期限内に提出し、書ききれない分はメールで補足します。記録を残す手間は1〜2時間ほどですが、退去時に数万円単位の差になることもあります。名古屋で新生活を始める方は、荷物を運び込む前の「空っぽの部屋」の状態を、必ず記録しておいてください。